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スペイン ユース1部で指導の日本人コーチがブラジル代表を分析



こんにちは。

ばやしコーチです。


W杯も決勝トーナメントに入ってきてさらに盛り上がっていますね。

日本代表も次ブラジルと対戦が決まってここからが正念場といったところだと思いますが、今回は普段スペインのユース1部リーグ(日本でいうところのU18プレミアリーグ)で対戦相手の分析を担当してる自分が普段どのように分析しているのかについて書いていこうと思います。


もちろん分析のおかげだけで勝ったわけでは無いですが、FCバルセロナC,FビジャレアルバレンシアC,Fをはじめ、同じリーグを戦ったリーガ1部のカンテラ全てに勝った経験を踏まえて、普段の分析の仕方を日本代表の次の相手であるブラジル代表を分析しながら少し紹介します。


ちなみに普段は対戦相手の数試合からポイントとなるシーンを切り取って、攻撃、守備、セットプレーの攻守で合計4本の動画を、相手の強みと弱点に対するゲームプランを提案したレポートとともにスタッフのグループに流してます。


また、その4本の動画を合わせて選手の頭に残っていて欲しいくらい最も重要な部分だけ

10分程度の動画にまとめたものを選手にミーティングで見せています。


ここでそれら全てを行うのは長くなりすぎるので、分析の流れをざっと紹介しようと思います。





  1. 分析の流れ

まずざっと普段やっている分析の流れを紹介してブラジルの分析について書いていこうと思います。

ちなみにデータ分析ではありません。それはまた違う分野と考えています。やっているのは戦術の分析から解決策の提案までです。



- 分析する試合を選ぶ

まず試合の映像に関して、その対戦相手と当たる週の前3週間ほどの試合を基本的には観ますが、自分たちが相手チームのグラウンドでやる場合は、そのグラウンドでの試合を優先したり、自分たちとプレーモデルが似ているチームと対戦してる試合を優先したりします。


特にこれは日本よりも感じることなのですが、ピッチの大きさがチームによってスペインでは全く違うことが日本よりもよくあります。カンテラの施設は日本のように基本的に約横68mの縦105mですが、街クラブでは約横50m縦100mなんてところもあります。横幅なんてペナから5mしかないところもあって、そうなってくると話はだいぶ変わるのでそのグラウンドでの試合を見ることを優先します。

- 分析ソフトを使ってシーンを切り取る

タグ付け機能がついている分析ソフトを使って試合を切り取っていきます。

自分の場合、攻撃、守備の場面をそれぞれビルドアップ、前進、フィニッシュメイク、フィニッシュの4局面に分けて、さらにトランジションを攻守で分けて考え、それぞれの局面での特徴が出てるシーンを切り取ります。ここら辺の定義についてはまた別の機会にします。

セットプレーはまた別で切り取ります。


- 切り取ったシーンを編集する

切り取ったシーンのポイントや注目すべきところにマークや矢印をつけてわかりやすくしたりコメントを入れて数十秒のカットを完成させていきます。

それらを組み合わせて各フェーズ毎にプレイリストにして1つの動画にします。


- レポートの作成

相手のメンバーと個人の分析、相手の強みと弱点をまとめて、その解決策の提案まで自分の場合はパワーポイントで作って共有しています。









  1. ブラジル代表の分析


ではこのような流れで日本代表の次の試合の相手ブラジル代表を分析していこうと思います。



・ 分析対象試合


ブラジル代表vsスコットランド代表


スタメン

1 アリソン


3 ガブリエル・マガリャエス

4 マルキーニョス

13 ダニーロ

16 ダグラス・サントス


5 カゼミーロ

8 ブルーノ・ギマランイス

26 ラヤン

20 ルーカス・パケタ


7 ヴィニシウス・ジュニア

9 マテウス・クーニャ


・ 各フェーズ分析


🔴攻撃(スペイン語ではCon Balón、チームがボールを持ってる時と表現する)



〜ビルドアップのフェーズ〜


ブラジルの攻撃基本組織は442と見る。 まずスペースの埋め方から。

ビルドアップ時は前進のフェーズよりも右SB13番はまだ下がりめ、DFラインは4枚ラインをキープ。左SH20番は完全に中のレーンでプレー。右SH26番は外のレーンを埋めること多い。

2トップのうち1枚は落ちてくるから、スペースの埋め方としては、4221プラス右SHという形。

次にアクションの仕方を見ていく。

相手の中盤ラインとFWのライン間に人を配置しながら前進していくことを狙う。基本的にそこを埋めるのは5番と8番のボランチだが、20番や9番も落ちてきてそこに数的優位を作ろうとする動きをする。

スコットランドのプレスは後退しながらだったため、そこまでブラジルは工夫する必要なく前進フェーズに移行していっていた。(こういう場合、実際は別の試合でハイプレスをかける相手と対戦している試合を分析します。)



〜前進のフェーズ〜


同じようにまず組織の仕方から。

前進のフェーズでは後ろは3枚になることが多いが、その3枚のパターンは2通りあって、両CBと、右SBの3枚かボランチが1枚落ちての3枚。

幅は左SBが必ずマックス幅をとって、右サイドはSBが取る時と、中盤の選手が取る時とある。

ビルドアップのフェーズと違って、相手のDFラインと中盤のライン間に人を多く配置する。 2トップも前線に固定で張らず、左SHの20番は必ず中でプレー、右SHもSBが上がっている時は中に入る。 ボランチも高さを変えつつそこまで入ってくるため、組織としては3枚後ろ、2枚大外、中に5枚の選手が入れ替わりながら埋めている形をとる。


アクションの仕方としては、1人はDFの背後狙う動きは入れつつ、それ以外の選手はライン間に差し込むフィルターパスを後ろ3枚と真ん中の5枚でボールを動かしながら狙う形。 7番がサイドに流れたり、9番がボランチまで下がったり、そのスペースに右SHが入ってきたりポジションの変化は多い

前進のシーン ポジションチェンジ、ライン間を探すボール回し


〜フィニッシュメイクからフィニッシュのフェーズ〜


基本的にスペースの埋め方は前進フェーズと同じ。どこを狙っていつ加速する意図があるかを分析する。

フィニッシュを作っていく時の狙いとして、特に次の3つのアクションは注意するべき。

常に相手中盤の前のスペースからのDFラインの背後へのパスを狙う意図。

ライン間に入れてそこに3枚以上絡んでワンタッチプレーで崩していくような意図。

サイドからアーリー気味のクロスをシンプルに上げてくる意図。

個人で言えば中心選手7番ヴィニシウスは右SBとCBの間のスペースを埋めることが多くそこからサイドに流れることも中に裏抜けしてくることも狙う。

狙いとしては、ヴィニシウスがそこにいることで相手はSBとCBが引きつけられることが多く、そうなるとマックス幅をとっている左SBに相手のSHが引きつけられ、相手のボランチとSHの間が空き、そこのフィルターパスを狙いやすくなるという点。

このフィルターパスを切る守備ができるかどうかは1つの大きなポイントとなるはず。そしてこれはヴィニシウスの周りに限ったことでは無い。


スコットランド戦の3点目はまさにそのような形から。ブラジルの8番の動きに引きつけられたスコットランドの2ボラの間が空いて、そこにフィルターパスを通し、そこにCBを引き出し、そのCBのスペースを使って得点。



ボールを回しながら相手のボランチの間を通してCBを引き出したところを狙ったフィニッシュ


〜攻撃から守備の切り替え、ネガトラのフェーズ〜

基本的に攻撃している時は後ろ3枚でリスク管理をしている。失った瞬間には中盤5枚とサイドの選手も必ず前に出てくる 最終ラインは基本高くキープしがち、ボランチが後ろ3枚に入ってる時はライン間のスペースが空くこと多い。

ネガトラのシーン 3枚のリスク管理とライン間のスペース



🔵守備(スペイン語ではSIn Balón、チームがボールを持っていない時)

〜ビルドアップ守備のフェーズ〜

守備の基本組織も442と見る。


守備に関してはまずプレスの開始ラインマークの種類から。


プラジルのプレス開始は1番前のゾーンから。


マークの種類はマンツーに近いミックスマーク。マンツーで人についてるけど、入れ替わりもあるし、カバーを作るために中間守備をしている。特にSHの選手はしっかり中に絞る。


その際相手の中盤の選手によってポジションを変えていたから、スコットランドに対しては4312のような形でプレス。2CBに対しては2トップ、後ろは基本的に同数で対応。



〜前進守備のフェーズ〜

1番前のゾーンを越えられた後は442のブロックの守備に移行するが、マークの種類はミックスマークのままな印象、つまりポジショニングの基準は相手選手になってるから、特にボランチの5番とかはよく相手についていってDFラインに吸収されていた。


これは結構穴が出来やすいやり方で弱点になり得る。


ボランチがDFラインに入った場合、両SHが絞らないといけないがそれが間に合うことは少なく、ライン間に差し込むパスが出しやすくなる。 また、守備は1段になるため、裏に出したパスのセカンドも拾いやすくなる。

相手のバックパスに対してはビルドアップ守備のプレスに移行。どんどん出ていく。

2トップの脇のスペースにはSHが基本出ていくし、SHが出ていくと中盤にスペースができるが、そこにDFラインからもどんどん出ていくためDFラインにギャップは作りやすい

前進守備のフェーズ CBはライン間に出てボランチがDFラインに入ってる



〜フィニッシュメイクからフィニッシュの守備〜

このフェーズで必ず見るところの1つはSBのカバーに誰が出ていくか


ブラジルの場合、基本的にはボランチがスライドしていくがボランチが間に合わない時、CBがスライドして、中盤の選手はディフェンスラインを補助する。


基本的にライン間にもDFラインの選手が出ていって中盤の選手はDFラインに吸収され、補助する形の守り方。


これも穴ができやすい守り方で、クロスに対して1段で守ることが多い。つまりセカンドが拾いやすい。


クロスに対するエリア内のマークの種類も、基本的にはミックスマークで、相手を基準にする。つまり、相手が下がればマークも下がり、空けたいスペースを空けることができる。

フィニッシュ守備 中盤がDFラインに吸収されて2段目の守備がいない



〜守備から攻撃の切り替え、ポジトラのフェーズ〜

まず、スコットランド戦では、スコットランドのビルドアップに対する守備からのポジトラによる得点があったがそこはもう失ったらいけないとしか言いようがない。来るのはわかっているから、失った後よりも失わない対策をしないといけない。


次に、ブラジルの自陣でボールを奪ったときからのポジトラに関しては、まずツートップのポジショニングが固定ではないことが1つのポイント。サイドに流れたり、ライン間に落ちたりする。


ボールを奪ったゾーンでは、まずショートパスの選択が多い。その後カウンターに行く時はツートップと両SHが大外より1個手前のレーンを使いながら出て行く印象。


常にカウンターが第一オプションというより、奪ってから繋ぎながら探す感じ。すぐに前1本ではない。

奪ったゾーンでのショートパスからカウンター


※以上のような分析に、セットプレーと、選手個人の特徴やスタメンのバリエーションなどを付け加えていきますが、今回はだいぶ長くなってしまうので割愛します。


・ ゲームプランの提案

以上の分析を踏まえ、ゲームプランの提案をします。


🔴自分たちの攻撃(今回の場合日本の攻撃)

〜ビルドアップ〜

ビルドアップにはマンツー気味で出てくるから、ポジションチェンジSobre Carga(1人の守備ゾーンに複数選手を配置すること)が有効。 例えば日本が後ろ3枚+キーパーで回す時、ブラジルのボランチかSHがスリーセンターバックのどれかに出てくるはずだから、これまで通り日本が343でプレーするのであれば、シャドーとボランチがサイドに流れることでサイドでSobre Cargaをするか、もしくはWBが中に絞ってきて、相手のボランチ周りにSobre Cargaを作る。 こっちの方が相手のサイドバックはそこまで絞ってきたくないから有効だろうし、日本も堂安選手や中村選手がWBなら相手にとって脅威にはなるはず。 しかも、リスク管理を考えると、3CBと2ボランチが中に残ってる方がいい。


〜前進からフィニッシュメイク、フィニッシュ〜

ブラジルが442で守ってる時も人にはついてくるから、シャドーが相手のボランチを引きつけたい。DFラインが5枚になってくれたらラッキー。 相手のSBが日本のWBを見たとき、相手のSHがマークいなくなるから、そこを引きつけるために日本のボランチはブラジルのボランチとSHの間にポジション取るといい。 そういったポジションをとりながら、狙いとしてはライン間のスペース そしてライン間を利用する手段として2つ。 後ろ3枚で回しながらフィルターパスを探す。 前5枚が高さを変えてDFラインのギャップを作り、その背後をどんどん狙っていきその後のセカンドを狙った攻撃。

そのため、両ボランチは前5枚と遠い距離にいるとうまくいかない。なるべく近い距離でセカンドを狙うこと。 クロスに対してはポジションチェンジ。特に最初ニアにいた選手は外に回ってニアのスペースを空けて後ろから飛び込む形は1つ持っておきたい。


対ブラジルのフィニッシュメイク 相手のボランチを引き出してCBを引き出すライン間からの2段目を使ってフィニッシュ

〜リスク管理と攻撃から守備のトランジション〜

まず後ろ3枚とボランチの距離も15m以内はキープしておきたい。 その上で、失った後ブラジルはショートパスを狙う傾向にあるから、ボランチとボールサイドのWB含めてすぐにプレスにかけにいくことが必要 そして後ろ3枚と逆のWB、ボランチはすぐに中に絞り、ブラジルの2トップに対してははっきりマンツーでマークつけるようにする。 相手のカウンターに対してはWBは外よりも中にまず絞って中のレーンを消していく。

対ブラジルのネガトラ 失った瞬間のプレスの強度はポイント

🔵自分たちの守備(今回の場合日本の守備)

〜ビルドアップ守備〜

ブラジルのビルドアップのフェーズでは比較的動きも少ないから、ここでしっかりプレスかけておきたい。


日本は攻撃と同じように343から523でプレーすると仮定して、ブラジルの後ろ4枚のビルドアップには3枚でかけていく。 その際、日本の左シャドーはブラジルの右CBとSBの間にポジションとってCBにボールが出たら外切りで出ていく。 ブラジルの絞った左SHにもしっかり出ていかないといけないから、シャドーが絞るか右CBが出ていく。ブラジルの右SBの高さを基準に決めるといい。

対ブラジルのプレス プレスを考える時は、切ってるところに出された時のプランBを考えておくことが大事。

〜前進からフィニッシュメイク守備〜

一番最初のゾーンを突破されたら、これまで通り541のブロックを作ることになるだろうが、前進守備のフェーズでは541よりも451のイメージを持っておきたい。 つまりライン間へのパスを防ぐために、中盤4枚は5枚いるイメージでガッツリスライドしないといけない。もし逆サイドに変えられたらWBが出ていく。ライン間を使わせない守備が一番重要。

仮にライン間を使われた、フィニッシュゾーンまで前進された、となったらDFラインは5枚で考え、後ろから出たらすぐに他の4枚が中に絞る動きを徹底しないといけない。

プラジルはポジションチェンジを繰り返してくるから、お互いの距離を近くして誰が出たスペースをすぐに埋められるポジションを取ることが大事。

前進された後、フィニッシュを作らせないために大事になること。いかに中盤の横幅を絞められるかがポイント

〜守備から攻撃へのトランジション〜

ブラジルは失った瞬間に後ろ3枚以外前にガンガン出てくるから、奪ったら飛ばすを徹底して奪ったゾーンから出ていくことを狙いたい。 その際のポイントとしては、ライン間と背後 最終ラインは高めにキープしてるし、ボランチがDFラインに入ることも多いから、ライン間と背後を埋めながらカウンターいけたらいい。 大外まで使ったらおそらく時間かかって戻られるはずだから、そうなればまた組織攻撃に切り替えるといいし、その瞬間もフィニッシュメイクのシーンのように、DFラインのギャップは常に狙いながらボール持っておきたい。


  1. 最後に

実際分析からゲームプランの提案というのはあくまで机上の空論です。 これができれば、勝てるという理論上の話ですがこれがないと始まりません。 そして、実際できるかどうかは選手の能力練習のプランニング監督の手腕によります。

個人的にですが、日本代表はもう各選手所属クラブで見せているようにどの相手にもやらないといけないプランを遂行する実力はあると思っています。 ソシエダがバルサに勝ってもそんなに驚かないような感じで、日本がブラジル相手に勝ってもそこまで驚かない気はします。ちなみにラフィーニャがいないのはめちゃくちゃでかいと思ってます。その分勝てる可能性も上がってると思います。


もちろんブラジルの個人も能力は高いので、その個人の優位性をどれだけ活かしてくるか、逆にそれを消しにいけるか。監督同士の勝負でもありますね。




前述したように、今回紹介した分析内容に、数試合分の情報を加えて、セットプレーの分析、各選手の分析も含めてチーム分析として、イリサールでは希望するチームに提供しています。

ご興味あるチームの方はぜひこちらからご連絡お待ちしております。



最後まで見ていただきありがとうございます。

また次回も見ていただければ嬉しいです。















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